明日はインド

2月の時と同じ、ぴゃっと行って、ぴゃっと帰ってくる旅行です。

バナラシのホテルも同じ。釘の出たベッドと小さな窓の独房のような部屋ですが、ガンジス河に面したコンクリート打ちっ放しのテラスが気に入っています。

ああ、一度でいい、飽きるまで旅を続けてみたい。

私がバックパッカー旅行を始めたのは40歳を過ぎてから。次男が小学校の中学年になり、子育てが一段落してからでした。
たいていは2週間のトレッキング旅行でしたが、ある時、ネパールの航空会社が帰国の便をオーバーブッキングして乗れなくなるというハプニングがあり、予定が3日間、伸びたことがありました。

あまりの幸運に、薄暗いトリブバン空港で、友人とネパーリーダンスを踊ったっけ。
航空会社が用意してくれた五つ星ホテルから、まず母に、次は夫のサブちゃんに、次は次男のお弁当を頼んできた同級生のママに電話して、事情を説明。
「いやあ、私も帰りたいんだけど」(まっ赤な嘘)
翌日ポカラへ引き返し、おまけのレイクサイドの3日間を満喫。オカネがないので、チベット難民キャンプに暮らす友人に毎日、夕飯をご馳走になっていました(私たちも難民)

若い頃、ヨーロッパを放浪していたサブちゃんはいいます。「もうトシなんだから、もっといいホテルに泊まりなさいよ」
学生時代、スペインに留学した友人はいいます。「そういう旅行は若い頃にやるものよ。なんでトシを取ってから」

でも、プールのある高級ホテルなんて、面白い出会いもないじゃない?それに、若い頃は海外にあこがれることもなく、ただただ、ひたすら自分の人生を生きていた。

旅行者には二つのタイプがあります。日程の中で、できるだけ動いて、いろいろな名所などを見て回るタイプと、一箇所滞在型のタイプと。
私は後者で、顔なじみになったカフェで、新聞を読みながら朝食を取る、なんていうのが好き。
仲良くなった村の子ども達に、英語の教科書を持っていく、なんていうのが楽しみ。

だから、ほぼ10年間、ネパールをトレッキングしても、アンナプルナを巡る同じコースしか歩いていません。いつも、「Don't forget me」といいながら、村のはずれの吊り橋までついてきたマン・タパ君はもう29歳。今はオーストリアで働いて、ネパールの家族に仕送りをしています。
我が家にホームステイした2ヶ月間は楽しかったなあ。千倉に連れていったら、初めて見る海に感激して、砂浜に棒切れで大きく「I LOVE JAPAN」って書いていた。

世界には、私の見たことのない風景がたくさん、たくさんある。でも、絵葉書のような景色を見たいとは思わない。

2月に宿泊したバナラシのホテルには、バブーという18歳の少年がいて、ちょっとワルだけど、上手な英語を話し、ガイドもしてくれます。「ガールフレンドは?」とからかうと、ぐいと親指を立てて、「今に最高のを見つけるから」
彼がもじもじしたのは、明日の予定を書いたメモを渡した時。「あなたが読んで。ボク、覚えるから」

学校、行ってないんだ。英語は耳で覚えたんだね。

バブーへのお土産に、次男のお古のシャツと、ヘビメタのキーホールダーをバッグに入れました。もちろん、2月に一緒に撮った写真も。